聞けない命令が、ある。
それは、雷の夜。
「趙雲、趙雲、あの雷の音を消してくれ」
「自然のことは、私にどうこう出来ませぬ」
あなたのぬくもりを、この腕に抱ける、夜。
「趙雲、ならばせめて耳を塞いでくれ」
「私の声が、あなたに届かなくなります」
聞けない命令が、ある。
雷の夜、あなたをこの腕に、胸に、抱く、俺。
その日だけは、俺は少し尊大になる。
あなたの命令を、聞けない。聞かない。
ぬくもりを独占できる、この夜だけは。
「ご安心を」
尊大になった俺は、優越感に浸りながら、こう言うのだ。
「私が、こうしてお傍におりますゆえ」
血をかぶるのは、平気だ。
戦に赴くのも、平気だ。
どんなことにだって、耐えてみせる。
耐えた後には、
あぁ、俺は、ここで生きてる、って、
そう思える瞬間が、来る。

「お帰り、翼徳」

俺は、この人のために、
この瞬間のために、生きてる。
関平、何でもするから、と殿に懇願され、初の脱走お手伝い。
狙うご褒美は、ほっぺにちゅー(…)口じゃないあたり、まだ純情です。

「なぁ関平、そろそろ動いても大丈夫だろう」
「いえ、まだです。あそこに父上が」
「えっ、いるのか、関羽が…!」
「は。軍師殿も一緒なので、もう暫くは身を隠したほうが良いかと」
「……関平、お前、たくましくなったなぁ」
「えっ!!?///」
「あー、でも可愛いなぁ」
「いえ、そんな! お可愛らしいのは、殿ですっ!!」
熱帯夜。
服は、寝てるときに無意識に脱ぎます。
戯れに髪に花を挿したら、蝶が寄ってきました。
蝶が。
花が。
阿斗。
抱っこ。
(・・・あっ)

離れたところからの、視線。
封。
阿斗と同じ花を持って、気まずげ。
父、接近。
「どうしたんだ?」
(・・・先、越された)










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