昼は、太陽。
夜は、星。































「なぁ、そう思うじゃろ、三成!」


けらけらと笑うのは、秀吉様。
かけられた声に、えぇ、そうですね、と、適当に、相槌を打つ。
秀吉様は、まだ、けらけらと、笑っている。
それにつられるかのように、おねね様も、清正たちも、笑っている。
この人は、太陽だと、思った。













「三成」


声をかけられたのは、夜。
はい、と、答えた。


「そんな場所に突っ立っとらんで、入ってこんか」


言われて、暫く黙ってから、はい、と、答えた。
そうして、秀吉様の部屋の前から、室内へと、移動する。


「毎晩毎晩、どうしたんじゃ。何か、用事があるんじゃろ?」


立ち続けて、すっかり温度の移ってしまった廊下が、僅かに軋んだ。
同時に、俺の心も、僅かに、軋む。
あぁ、夜が来た。太陽が、隠れる。太陽が。


「いえ・・・特に、用、と、いうわけでは・・・」


この人は、太陽だと、思った。
明るく、人を照らす、太陽だと思った。


「ただ、その、少し」


だから、夜が嫌いだ、と、思った。
太陽を隠してしまう、夜が。


「お顔を・・・見たく、なりまして」


そのまま、太陽が消えたら、どうしよう。だとか。
そんな、縁起でもないことが、頭をよぎる。


「夜分に、申し訳ありません。もう、大丈夫です」


だから、毎晩。
気配を求めて、部屋の前に、来ていた。


「三成」


そうして、呼ばれる、己の名前。
はい、と、答えた。


「まぁ、折角来たんじゃ。ここで、寝ていけ」


一緒に、と、続けられた、言葉。
はい、という声は、出なかった。
代わりに、いいえ、と、声を搾り出す。


「なぁ、三成」


秀吉様が、手招きをした。
断れず、その傍へと、寄る。


「三成は、夜が嫌いか」


とんとん、と、床を叩かれ、座れ、と、促されていると気付く。
そして、俯きながら座ったと同時に、この言葉。
思わず、顔を、上げた。


「夕暮れ時に、眉が寄っとる。日が落ちた瞬間は、眉間にすごい皺が出来とる」


何故、と、問う前に、秀吉様は、そんなふうに、言う。
俺はまた、俯いた。


「秀吉様は・・・夜は、好きですか」


俯きながら、問うた。
太陽は、夜の闇に隠されることが、嫌ではないのか。
俺は、嫌だ。すごく、嫌だ。


「あぁ、夜は好きじゃなぁ」


与えられた答えに、着物を、握り締める。
何を期待していたんだろうと、思う。
俺が、夜を嫌おうと、この人には、関係ない。
それは、当然だ。当然のことだ。
けれど、何故だろうか。
嫌いだ、と、言ってほしかった。
俺と同じものを、嫌いだ、と、言ってほしかった。


「なぁ、三成」


更に、着物を握り締める。
そんな俺に、声。


「夜は、お前たちが、ぐっすり眠るじゃろ」


この人は、太陽だと、思った。


「その寝顔を見るのが、たまらなく好きでなぁ」


存在そのものが、太陽だと。


「そういうわけで、夜が、好きなんさ」


手に、また、力が篭る。


「でもな、わしは、昼も好きじゃ」


顔を、上げた。
目が、合う。


「夜、ぐっすり眠れるっちゅーことは、」


この人は、太陽だと、思った。


「昼間、たっくさん笑って、遊んで、元気に過ごした、っちゅーことじゃろ」


その、太陽の、中。
気付く。


「そういうわけで、三成たちが笑って過ごせる昼間も、好きじゃ」


星だ。
この人の、目の中。
きらきら、光る。


「・・・秀吉、様」


この人は、太陽だ。
人を照らす、太陽だ。
俺の、行く先を、人々の行く先を照らす、太陽。
だから、夜が、嫌いだった。


「何じゃ、三成」


けれど。
太陽の中に、星を、見つけた。


「その、」


夜が、俺の大切な太陽を奪っている、と。
頑なに、夜を嫌っていたが、それは、違うのだと、気付いた。


「・・・その、」


この人は、太陽と、星を、持っていた。
太陽の光で、行く先を照らし、きらきらと、星の光で、見守る。
だから、俺は、漸く、気付いた。


「やはり・・・一緒に寝ても、いいですか」


満面の笑みを見せる、目の前の、主。
太陽と、星を持つ、主。
昼と、夜と。そのふたつは、同じもの。


「当然じゃろ!」


この人が。
この人こそが、俺の、世界そのものなのだと。














ぷー田さんに捧げます!
秀吉の口調がサッパリです!!
三成が思いのほか乙女でした!!!
まぁ、三成の小姓時代と思ってもらえれば・・・。
佐吉(三成幼名)で書こうかなとも思いましたが、面倒なので三成で(笑)
とりあえず、まだちょっと子供っぽいイメージです。
多分ここから、秀吉様ハァハァ街道驀進すると思います。


「全」 ―そのすべてが、おれの―





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