釣り糸が、くいくいと、動く。
気付いているけれど、気付かないフリ。































「あ。引いているぞ、封」


言われて。
初めて、糸に気付いたフリをする。


「あぁ・・・逃げられてしまいました」


竿を引き上げて、出てきたのは、糸だけ。
苦笑いしてみせると、あなたも、笑う。


「封は、釣りが苦手なんだなぁ」


好きなんですけどね、と、あなたの言葉に付け加えて。
再び、川へと、餌をつけた釣り糸を投げ入れた。


「義父上。私、魚釣りは、好きなんですよ。本当に」


穏やかに流れる川の水は、言葉を遮ることも、しない。
きちんと届いた言葉に、あなたは、うん、と、笑って、頷いた。


「封から誘ってきたんだ。嫌いだとは、思っていないよ」


深い、この声が、心地良い。
柔らかい視線を受けて、身体が、熱くなった。
少し照れくさくなって、川に、足を入れる。


「義父上、水が冷たくて、気持ちいいですよ」


思いのほか、水温が快くて。
手も水に浸して、顔を濡らす。


「封」


そんなことをしていたら、不意に呼ばれて、顔を上げた。
途端に、飛んできたのは、水。


「水も滴る、良い男だな」


人の顔に水をかけて、笑顔で、あなたがそんなことを言うから。
だから、おかえしに、こちらからも、控えめにだけれど、水をかけた。
そうしたら、直後には、もっと大量の水。


「やりましたね!!」


竿を置いて、川に入って、あなたの正面に立って、にやりと笑う。
そうして、もう遠慮なんてせずに、思いっきり、水面を叩いた。


「おっ、やるな、封!」


盛大に上がった水飛沫の向こうで、笑う気配がする。
それと同時に、ぐい、と、肩が押されて、水の中に倒れこんだ。
ばしゃん、と、また、盛大に水飛沫。今度は、ふたり分。


「義父上、お召し物が濡れますよ」
「水をかけておいて、今更それを言うのか?」


笑って返された言葉に、それもそうだ、と、思う。
ならば、遠慮はいらない。
水をすくって、あなたへ、投げる。


「封、釣りはいいのか。竿が流れる」


あまりにも、はしゃぎすぎたせいか。
あなたの言葉で、視界の端に、流れていく竿が入った。


「ええ。いいんです」


普通の釣りになんて、そんなに興味はない。
だから、釣り糸が引いていようが、気付かないフリ。


「私が欲しい魚は、あんな竿では釣れませんから!」


浅い川だから、泳ぐ魚くらい、見える。
魚が餌に興味を示しているかどうかも、見えるんだ。
現に、今だって、足元を魚が何匹も、泳いでいる。


「それよりも義父上、今日は一日中、封と共に、遊んでください!!」


自由に泳ぐ魚は、とても、気持ちよさそうで。
だから、心奪われた。










最初は、眺めていよう、と、思った。
でも、無理だ。


「さ、流石に・・・一日中、遊びっ放しは・・・きついなぁ・・・」


周囲が暗くなる頃に、漸く、水遊びは終息。
お互いに息を切らせて、それでも、まだ楽しさの余韻は消えず、笑う。


「そういえば、封。お前の、欲しい魚とは・・・?」


川岸に向かう最中、あなたが、言った。
一瞬、どうしようかな、とも、思ったけれど。


「それが釣れるまで、私は魚釣りを続けようと思っています」


まだ、きっと、早い。
もう少し、先。


「なんだ、私にも教えてくれないのか?」


だって、きっと今教えたら、逃げちゃうでしょう?
だから、言うのは、もう少し、先。


「でも、必ず釣ってみせますよ」


ねぇ、義父上?
















キリ番30000のリク、劉封×劉備でほのぼの、でした!
ほのぼの・・・ほのぼのって何だ・・・!! すみません、全然ほのぼのにならなくて・・・!(泣)
何だか劉封の決意、みたいな感じになってしまいました・・・;;
いつもうちのサイトでは生殺しされてる劉封なので、幸せにしてやろうと思っていたのですが。
ほのぼのでもなければ、あんまり幸せでもないですよね・・・。
こ、こんなのでもよろしければ、どうぞお納めくださいませ・・・!!

〜伊東びゃくさまへ捧ぐ〜

和沙倉恵・拝


「釣」 ―つりあげる―





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