世界は、華やかなものだった。
そうではないと思っていたが、違った。































不思議な現象だった。
ある日、外を見れば、とても鮮明な空があった。


「青い・・・」


思わず、呟く。
真っ青な空を、更に見上げた。


「・・・鳥だ」


鳥が二羽、飛んでいた。
戯れるように、あちこちを飛び回る。
その鳥を目で追って、首を動かした。


「空に、何か?」


そして、視界に入ったもの。
それは、やけに鮮明。


「・・・太陽」


鮮明で、眩しいもの。
一瞬目を細めて、もう一度、開く。


「太陽ですか。将軍が平時に天気を気になさるとは、珍しい」


やはり、鮮明。
赤い唇は、楽しそうに動く。
深い色の目が、笑んでいた。


「でも、いい天気ですね。太陽が、とても眩しい」


世界は、色鮮やかだった。なんという、華やかさだ。
戦塵と澱んだ空気で曇った空、人の血。
それ以外の世界など、知りもしなかった。
世界は、暗い。そして、己はそこに立つべき人間。


「鳥も、飛んでいた」


なのに。今、これは何だ。
俺は、何処に立っている。


「えぇ。鳥も、天気が良いので気持ちいいのでしょうね」


色鮮やかで、華やかな。
ここは、何処だ。


「・・・お前は」


暗い世界は、何処へ行ったのだ。
何故、ここはこんなにも明るいのだ。


「私が、何か?」


何もかもが、はっきりと、見える。
いや、以前から、お前は、お前だけは、よく見えた。
お前は、はっきりと良く見えて、お前の周囲は、ぼんやり見えた。
だからお前は、何か特別な力を持っているのだと思っていた。


「お前は、太陽が、好きなのか」


ああ、そういえば、少し前から、不思議な現象は起こっていた。
初めて見たときから、お前は、はっきりと見えていた。眩しいほどに。
だが、ここ最近、俺の前で、お前の触れたものも、はっきり見え始めた。
それどころか、俺の前で、お前が見たものまで、はっきりと。


「そうですね。太陽が、好きです」


なるほど、そうか。
お前は、俺の周囲のもの全てに触れ、全てを見たのか。


「将軍は、お嫌いですか。太陽」


目の前に広がる鮮やかな世界で、お前は最たる鮮やかさを誇っている。
その光を、彩を、華を、他のものに与えるなど、容易いのかもしれない。


「・・・お前が嫌いでないのなら、きっと俺も嫌いではない」


お前が、「何ですか、それは」と、笑う。
光が、散る。視界が一段と、明るくなった。
不思議な現象だ。とても眩しい。


「劉備。鳥は、好きか」


問えば、「えぇ」と、声。
そうか、と、思う。
ならば俺も、鳥は嫌いではない。


「草や木や花は、好きか」


再び、「えぇ」と、声。
ならば俺も、草や木や花は、嫌いではない。


「なら、劉備」


更に問おうとして、口篭る。
何か、と、声がする。
が、何故か、声が出ない。


「呂布将軍?」


視線が、向けられた。その視線が、己に触れている。
ああ、これで俺の身体も、色鮮やかで華々しくなるのだろうか。
動かない口に慌てるよりも先に、心が、そんなことを思った。


「どうなされました」


心配と不安が入り混じったような声に、ふ、と、自嘲の笑みを浮かべる。
心配。不安。・・・そうか。そうなのか。俺は、怖いのか。
するりと、口をついて出そうになった言葉は、とても危険だ。
失うのが怖いのだ、俺は。この世界を。


「・・・劉備。お前は、お前自身が、好きか」


きらきらと、色鮮やかになっていく、世界。
華やかで、眩しくて、だが、とても心地良いこの世界。


「私自身、ですか」


問えば、失ってしまうやもしれぬ。
だから、無意識に、口は問うことを拒んだのだ。


「・・・そうですね・・・」


明るい世界の中で、最も輝く存在が、考えている。
この世で一番美しい赤色が、動いた。


「嫌いでは、ないです」


その答えに、「俺は、好きだ」、と、心で告げる。
そうして、問うことをやめた質問へ、鎖をかけた。
多分、死ぬまで、・・・死んでも、問わない。


なら、劉備。


心の奥底で、呼びかけた。
あの問いには、厳重に鎖を巻きつける。飛び出していかないように。
それでも、心の奥底で、問いが、答えを求めているのが、わかった。


お前は、俺のことは、好きか。
















キリ番36000のリク、呂布×劉備で呂布の片想い話でした!
なにやら、呂布の片想い自覚篇、みたいなのになってしまいましたが・・・。
恋をすると、世界がやたら変わって見える、とか、そんな感じです。
劉備さんに恋をして、周囲のものを見るようになっていった=世界が色づいた、と。
あと、劉備さんが太陽が好きなら、自分も嫌いじゃない、という呂布の理論ですが。
あれは、好きな人が好きなものは自分も好き、という、恋の理論(?)です。

キリリク、こんな感じでよろしかったでしょうか・・・っ!
ご不満さえなければ、どうぞ受け取ってやってくださいませ・・・!!

〜朽龍さまへ捧ぐ〜

和沙倉恵・拝


「片」 ―かたこい―





女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理