ゴーイングメリー号は停泊中。
俺様とナミは見張り台の上で他の連中の帰りを待っている。
晴天快晴。海は凪。
「あ゛〜も〜〜、18の夏が過ぎて行ぐ〜〜〜 …」
ナミが手すりにだれかかって、どすこい声をもらした。
「なんだよナミ。このエキサイティングな航海が不満かよ?」
「いや、それはもういいってぐらいなんだけど、なんかこートキメキってものがナイのよね〜。だって、あんたは元々カヤさん一直線だし、ゾロはなんかいつも取込み中みたいな奴だし、サンジくんはあー見えて、ちょっと踏み込もうとするとめんどくさい奴だし…」
「ナミてめェ…男なら誰でもいいのか?υυ」
バカヤロウッッという 音と共にナミの鉄拳が俺の頬に炸裂した。
「ちがうでしょ!!っ──────だって… 。」
ナミがちらっと舳先を見た。
船長を乗せていないメリーさんの頭が所在なげに揺れている。
「 …ナミ、お前さぁ、惚れるなら人間に惚れろよ。ありゃあゴムだぜ?」
「そうね、きっと脳ミソもゴム… って誰が惚れたとか言ってんのよッ!?!
あ゛ーもーっヤダ。せめてカッコイイ海兵さんに告られて『ごめんなさい!
私とあなたでは住む世界が違うの…!!(涙)』とかって ナイのかしら?」
「最初っからフルつもりかよ、ヲイυ」
「なぁ、ナミィ!どっかにさヘンてこな厚い嵐の壁に囲まれた島があってよ、
そこにはすんげぇ宝があるんだと!行ってみたくねェか?!」
突然ルフィの声がして、ナミがドギマギした。
こんな時のしぐさはちょっとカヤに似てて可愛いんだけどな。
「い、いつの間にいたのよ?危険と宝ならグランドラインで充分でしょ!!」
ルフィはいつの間にか得等席におさまっていた。
「んー、グランドラインの途中にあるのかもしれねェしな。 とにかく 特別
な島だって話しだ!ウソップは行くだろ?カヤ連れて。」
「お…おう。俺は海の勇者だからな!でも、カヤ…?カヤはどーかな…」
けど、そりゃ最高だろうな。一緒に航海できたらよ。
「特別な島ってどう特別なのよ!? だいたい”すんげぇ宝って”いくらくらいなの?」
「さぁーなぁー、まだ行ったことねェしな。…一生暮らせるぐらいィ???」
「 っあんたの言うことは漠然としすぎッ! まともにつき合ってたら命が幾つあっても足りないわ!」
「でも行くだろ?」
「行きたくないっての!」
「いや行くんだ。」
「決めつけんなッッ!」
不毛だ。これが会話なのか。
「んじゃ、これで決めよう。表が出たら行く。裏が出たら行かねぇ。」
言うなりルフィは100ベリーコインを出して投げ上げた。
青空に キラキラと回りながらコインが放物線を描く。
カランと見張り台の 床を一周して止まった。
ナミが覗き込む。
「あ…表…」
「しししし!決まりだな!」
「っ…あーもう! あんたの運強さだけは認めるわよ。」
「む、運じゃねーよ。そいつは”その宝島”のコインで
当り前のことしか巻き起こさねぇとゆー、伝説の不思議コインだっっ!!!」
「当り前のことなら起こって当り前じゃない。」
「んあ?そりゃそーだな。だからナミはそこへ行くんだ。 航海士がいねーと俺が困るしな。」
「〜〜〜真顔で言ってるし。も、いい。好きにして。」
ナミが再び手すりにだれかかった。
「ウソップゥ!そのコインお前にやる!カヤにも見せてやれよ!」
「え?ああ??いーのか? 100ベリーを笑う奴は100ベリーに泣くぞ?」
なーんか怪しいぞルフィ。言いてぇことがあるだろ?
思いながらコインを拾って見た。
──────────な、なんだこりゃ?!両方表柄じゃねぇか!!
たまげた拍子にナミにあっさり気付かれちまった。
「ああーっ、何よこのコイン!?!あっきれた!!!」
ルフィが照れ隠しみたいに口笛を吹く。
「まー…いいじゃねーか !どーせ起こるのは当り前のことだけなんだしな!」
「いばるなイカサマ野郎ッ#」
ナミにツッコまれながら、ルフィが同意を求めるようにこっちに視線を投げた。
ま、確かにそーだ。ルフィの言う通りだろ。占いの結果なんて、
本人の希望を明らかにするだけだ。
それに─────────
陽に光る、意外にもしっかりした重さのそのコインは、
俺的にもとても綺麗に見えて…
「ナミ、これ持ってろよ。宝箱の鍵かもしんないぜぇ?」
「え」 と戸惑って受けとったナミと、
「おい」とバツ悪そうに赤くなったルフィの、
まぁ、この先二人がどうなるにしろ、
きっと一生もんの、ちょっと特別な──────
宝になるんだろうと
思慮深い俺様、キャプテーン・ウソップは思ったってワケだ。
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