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| Column: テロと民主主義 | |||
| by ぼーん globalpeace:1898 | |||
| 〜 Column: テロと民主主義 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「すべての民主的世界の敵である」 ブッシュ米大統領は、米同時多発テロの犯人についてそう述べた。 今回は、この言葉を検討してみよう。テロリストとは本当に民主的世界の敵なのかどうか、また敵だとして、我々は彼らをどう裁くことができるのかを考えてみよう。 まずは、民主的世界というものについて考えてみる。 我々の世界には、不可避的に様々な利害対立が存在する。その利害の対立を、暴力によらず、言論によって解決しようとするのが民主主義である。 言論によって解決が決定されたとき、つまり民主的に解決が決定されたとき、民主的世界のメンバーはその決定に従わねばならない。決定プロセスのいかなる場面においても、暴力の行使は許されない。この「決定」は、我々の社会のルールを決定する。と同時に、この「決定」は個々のメンバーが生きる条件を決定する。この「決定」の枠内で我々は生きる。 もし、その枠組みの中で、生きるに値する十分に豊かな生を生きることができるとすれば、人々はその枠組みを守る理由になるだろう。しかし、もし、生きるに値しない惨めな生しか生きられないとすれば、どうなるだろうか？まずは彼らは、自分たちも生きるに値する生が生きられるように、「決定」を変更しようと試みるだろう。おそらく、まずは民主的世界の作法に従い、言論によって「決定」を変更しようと試みるだろう。 しかし、既にある「決定」に満足している人たちが、この変更の要請に真面目に取り合わないならばどうなるだろうか？言葉を尽くしても、他のメンバーが無視すれば、この人達は、そのまま放置される。そのとき、彼らには二つの選択肢しかない。一つは、古い「決定」の中で、みじめな生を生きること。しかし、彼らにこの「みじめな生」に甘んじろ、と誰が要求できるだろう。彼らの中の一部が、もう一つの道を選ぶ。 それは、民主的世界のルールそのものを放棄して実力行使に出ることだ。ここにテロリズムが生まれる。(*1) テロリストは民主的世界では禁止されている暴力を用いてその意思を貫徹しようとする。その意味で間違いなく民主的世界の敵である。しかし、それと同時に、それは民主主義の機能不全が引き起こした病弊でもある。テロを引き起こすのは民主的世界の中で見捨てられた人たちであり、その動機は民主的世界に対する怒りであるのだ。 だからブッシュは、そして我々は、テロリストを非難する前に、国際社会における民主主義の有名無実さを真剣に反省するべきなのだ。テロリストを民主的世界に対する敵と糾弾できるかどうかは、我々が民主的に問題を解決する可能性を提供できていたか否かに決定的に依存する。 そして、我々は間違いなく提供できていなかったのである。中東和平交渉の顛末を思い起こそう。ダーバンの反人種主義・反差別世界会議でのアメリカ・イスラエルの醜態(*2)を思い出そう。そして、それらの人権に対する冒涜を止めることのできなかった国際社会の無力を認めよう。 我々はテロリストを裁く前に、我々自身、国際社会を裁かねばならない。そして国際社会の不正を正すことを明言しなければならない。そうやって初めて、テロリストの責任を問う倫理的資格を我々は得るだろう。 (*1) 前号でテロの動機として、「不正義の糾弾」と「単なる金儲け」の二つを考えたが、本稿では前者の動機しか考えていない。それは、後者の理由の場合はその不正は明白であるし、また、それゆえ仮に後者の理由でなされた場合でもテロリストは前者の理由でやった、と主張するだろうからだ。 （前号は、http://kobe.cool.ne.jp/2330/bsf_bn/bsf002.txt にあります） (*2) 多くの参加国がイスラエルのパレスチナ人に対する人権侵害を糾弾する内容を決議に盛り込もうとしたのに対し、それを拒否して会議途中で退出した事件のこと。 “U.S. and Israel Quit Racism Talks Over Denunciation(2001.09.04)” （http://members.tripod.co.jp/ytlingo/ の真ん中あたりにある）を参照。 ＊ ご意見・ご感想はborn@bs.forum.ne.jpまで。 （BACK STREET FORUM Mail Magazine vol.003に掲載） 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 born <born@oak.zero.ad.jp> 社会問題のメルマガやってます。→ http://born@bs.forum.ne.jp 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 |
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